特別区設置時における介護保険事業事務を一部事務組合が担うことに反対する声明文 「特別区設置協定書」についての提言

特別区設置時における介護保険事業事務を一部事務組合が担うことに反対する声明文
「特別区設置協定書」についての提言

2020年2月19日

大阪市介護支援専門員連盟

大阪市を廃止して特別区を設置する「新たな大都市制度」の是非について2020年11月上旬に再度住民投票が実施されることが見込まれています。これに関し「大阪府・大阪市特別区設置協議会」がまとめた「特別区設置協定書(案)」においては、介護保険事業事務は、保険料・サービスの公平性等を確保するため「一部事務組合」を設置し運営することとされています。その点について、私たちの意見を述べます。

一部事務組合を設置して介護保険事業事務を行うという制度設計については、地域住民に身近な市町村等が実施主体となり地域の固有のニーズに応じたきめ細やかな対応をするという介護保険制度の趣旨、住民の主体的な参加によって地域づくりを行う地域福祉の理念、地域の課題を解決するなかで重度の要介護者となっても住み慣れた地域で暮らし続けることができる地域をつくる地域包括ケアシステムやゴールドプラン21の理念に反するのみならず、特別区を設置することで住民の自治を現状より拡大し地域の実情や住民ニーズに応じた行政サービスを提供するとされる特別区設置のそもそもの目的(ニア・イズ・ベター)とも合致しないものと理解せざるを得ません。

現に、一部事務組合で介護保険事業事務を行っているくすのき広域連合に対し三菱UFJリサーチコンサルタントが実施した報告書では、『各市の課題の吸い上げが行いにくく施策の合意形成を行うのに時間がかかる』『連合と市の間で明確な役割分担がされていない』『市の裁量を発揮する際に連合との調整が必要になり事業実施に難しさを感じる』『事務や決裁を二重に行うことになっている』などの様々な問題が指摘されています。

 これら、特別区設置後に想定される住民自治の根幹に関わる重大な問題について十分な解決を図ることなく、地域での暮らしの実情に応じたきめ細やかな支援を必要とする高齢者を支える介護保険について一部事務組合を設置して行うことは、現在の大阪市の状況よりも行政サービスの低下を招くことで地域の高齢者の暮らしとその支援者の活動に重大な負担と混乱を発生させるものと判断いたします。

  1. 一部事務組合で行う介護保険事業は、地域の自主性や主体性に基づき地域の特性に応じて作り上げていく地域包括ケアシステム構築の妨げとなり、地域で暮らす高齢者に対してきめ細やかなサービスを提供することが困難となることが明白である。
  2. 特別区設置の目的とする「ニアイズベター」と相反する制度設計を住民に対し詳しい説明もないまま推し進めることは民主主義の原理に反している。
  3. 一部事務組合で介護保険事務を行っているくすのき広域連合について様々な問題が指摘されている。同様の問題の発生が懸念されるがその解決策については十分に検討されていない。
  4. 現在大阪市では要介護認定事務の大幅な遅延が発生しているが、一部事務組合において要介護認定事務がより非効率なものになりさらに大きな負担と混乱が発生することが懸念される。

よって、大阪市介護支援専門員連盟は、介護保険事業事務を一部事務組合が担うことに反対します。